オモシロ

【誰でも分かる】「量子力学」ってなんなの? 詳しい人に聞いてきた【入門編】

 

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こんにちは。ヨッピーです。

突然ですが、みなさんは「量子力学」をご存じでしょうか?

「知らねぇ!」っていう人も、「量子コンピュータ」とか「シュレディンガーの猫」といった単語は聞いたことがあるかも知れません。

ちなみに僕は文系出身で、勉強を全然してこなかったことでお馴染みのクズなのですが、この「量子力学」については、調べれば調べるほど意味不明すぎておもしろいという摩訶不思議な体験をしましたので、このおもしろさをみなさんと共有したいと思ってこの記事を書くことにしました。

題して……、

誰でも分かる! 分かりやすい量子力学入門!

です!

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ちなみに今回の撮影には株式会社人間の社領エミ(@emicha4649)さんが同行しています。

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「今日はなんで私を呼んだんですか?」

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「まず、今日お話を聞く先生がアメリカ行ったり仙台行ったりで飛び回っててやたらと忙しいもんで、ここ関西国際空港でしか時間が取れなかったもんだから大阪で暇そうな人を探したんよ」

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「なるほど~~! Googleで『大阪 暇人』で検索すると私がトップに出ますもんね!」※出ません。

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「そうそう。あとは、僕、量子力学についていろいろ調べたせいで中途半端に知識がついちゃったもんだから、まったく何も知らない新鮮な人のリアクションを見たかったっていうのが大きいです」

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「分かりました! あれ? でも、さっきから背景が全然関空じゃないですよね?」

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良くそこに気付いたね。実は今回の撮影が終わってからSDカードがブッ壊れて撮影したデータが全部飛びました

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「なにそれ。最悪のやつじゃないですか。どうするんですか? 撮り直し?」

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「まぁ普通ならそうなんだけど、いかんせんお忙しい方でスケジュールが抑えられないので、再現イラストありものの写真でなんとかすることにします」

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「大丈夫かな……」

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本日の舞台となる、本来の関西国際空港内部の写真(フリー素材)。

 

大関先生のありがたいお話を聞こう

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「はい。そんなわけで今回、お忙しい合間をぬってお時間をいただいた先生をご紹介しましょう!」

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「京都大学大学院、情報学研究科システム科助教の大関真之先生じゃーーーーい!」

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大関真之

1982年東京生まれ。

2008年に東京工業大学大学院理工学研究科物性物理学専攻博士課程を早期修了。

2010年より現職 京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻助教。

「量子アニーリング」形式に関する研究活動を展開中。

TwitterIDは@mohzeki222

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「東工大の院出て今は京大の助教なんやて。『ザ・知識!』って感じですね。よく分かんないけど」

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「本日はよろしくお願いします!」

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「僕は『あれ? 僕って義務教育終えたっけ?』っていう疑問がちょくちょく湧いたりするくらいの知能レベルしかありませんが、よろしくお願いします!」

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「私もこの間、右と左、どっちがどっちか分かんなくなってパニックになったくらいの知能レベルです! お願いします!」

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「まず最初に聞いてみたいんですが、量子力学ってどの程度ご存じですか?」

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「僕はネットであれこれ見たよ、くらいです!」

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「ゼロです! 何のことか全然分かっていません!」

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「良いですね。まず『量子』っていうのは物質を作る小さな小さな単位なんですね。原子っていうちっこいのが結合して分子になるっていうのは理科で習ったと思います。H2O(2は下付き)とかああいうのですね。その原子とか分子のように、物質を形づくる素材にあたる小さいものを量子と呼びます。量子の中には原子や分子、電流の正体である電子とか、光のことですが光子とか、いろんな種類があります」

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「なるほど」

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「どれくらい小さいかって言うと、小さすぎていろんな物質を素通りしちゃったりするものもあります

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「そうそう。スーパーカミオカンデとかニュートリノとかって聞いたことある?」

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「こないだノーベル賞貰ってたやつですよね?」

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スーパーカミオカンデ検出器を擁する神岡宇宙素粒子研究施設

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「そうです。あのニュートリノも量子ですね。スーパーカミオカンデって、あれは何かと言いますと、限りなく純度が100パーセントに近い純粋な水を、大きなプールみたいなものに大量に貯めてある施設なんですよ。で、その大量に溜まった水の分子の中にある電子に、宇宙から降ってくる小さな小さな、ニュートリノと呼ばれる物質がたまーーーにぶつかるんですよ。宝くじがあたるみたいなもんです。宝くじはたまにしか当たらないので、大量に水を用意して当てに行くんですよ」

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「そして運良くニュートリノがぶつかった際に、その大量の水から飛び出た電子の衝撃波をセンサーで検出するための機械なんです。逆に言えば、それくらい大がかりに探さないと実態すら捉えられないくらいに小さな物質が存在するってことですね。ニュートリノは人間の身体くらいなら素通りします。なんなら地球丸ごと通り過ぎていきます」

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「おお……! じゃあ、人間の手では捕まえられないくらいに小さな小さな粒っていう事ですね」

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「おっ! その小さな粒っていう表現、良いですねぇ~!」

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「良いですね。それがここからのキーワードになります」

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「そうそう。量子力学がすごいのはここからだから!」

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「なんだろう。なんかムカつく」

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「でね、目に見えるくらいの大きさのものに関しては『どういうルールで動くのか』っていうのが現代においては大体分かっています。玉がどう転がるか、とか固体に熱を加えると液体になって、もっと熱すると気体にって。あれですね。氷から水、水から水蒸気になるとか」

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「なるほど。理科で習ったやつ」

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「だけど、それよりも小さい単位である量子になると、これまでのルールが全然通用しないんですよ。今までの感覚だとまったくもって意味不明な動きをするんです。だからこそ『じゃあ、量子はどういうルールで動いてるんだ』っていうのを調べる必要がありますよね。それが量子力学です」

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「うーん。具体的には、例えば目に見えるサイズの玉と量子で、その動き方のルールにどういう違いがあるんですか?」

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「いやーさっきから良い質問するね。見込みあるなぁ~!」

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「そうですね。良い質問です」

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「さっきからこの二人がちょくちょく腹立つな……」

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「先生、ぜひあの、2重スリット実験の話をしてくださいよ」

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「良いですね」

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「え? なんですかそれ?」

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「2重スリット実験というのは、20世紀で最も美しい実験にも選ばれたすごく有名な実験なんですよ」

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「有名とか言われてもこれまで生きてきて一回も聞いたことない」

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「では、小さい砂の粒を、スプレーみたいなもので、こんな感じで2つスリットを開けた紙に向かって噴射するのを想像してください。スリットの先には接着剤がついたスクリーンが置いてあるとします」

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「そうすると、その向こう側の紙にどんな模様が出ると思います?」

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「それはたぶん、こんな感じで、縦に砂粒がくっついた線が2つ出るかと……」

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「はい。正解です。では今度、これが光だったらどういう模様になると思いますか? 先ほどと同じく、こんな感じで2つスリットをつけた紙を置いて、その先に光が当たると感光するスクリーンがあったとします」

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「今度はどういう模様が出ると思いますか?」

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「え? さっきみたいに縦の線が2つ出るんじゃないんですか?」

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「それがですね、今度はこんな感じで縞模様が出て来るんですよ」

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「えっ! なんで!?」

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「さっきの小さい砂は『』なんですけど、光は『』としての性質を持つので波紋の山と山がぶつかるところは強く光って、山と谷がぶつかって打ち消し合ってるところは暗くなるんですよ」

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「分かりやすいようにイラストにするとこんな感じなんですが、波はお互いに干渉しちゃうんですね。要するに、この実験をすることでその物質が『』であるのか『』であるのかが分かりそうです。縞模様が出たら波2本線が出たら粒っていう具合にですね」

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「なるほど。で、それが量子力学と何の関係が……?」

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「まぁまぁ、おもしろいのはこれからだからね! もうすごいんだから!」

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「なんでヨッピーさんがドヤ顔するの?」

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「じゃあこの実験を、量子のひとつである電子でやるとするじゃないですか。鉄砲みたいなもので、電子の粒を一発ずつスリットに向けて撃ち込んでいくんです。それを模様が出るまで何度も何度も繰り返すんですね。そしたらどういう模様になると思います?」

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「ええと、電子の粒だから粒ということで砂の粒と同じように2本の線が出るかと……」

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「そうなんです。普通はそう思うじゃないですか。粒を撃つんだから。でも実際には縞模様が出るんですよ」

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「こんな感じに」

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「え? なんで? 粒なのに?」

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「ね、一発ずつ撃ってるから干渉しないはずなのに縞模様が出るんですよ。不思議ですよね。でも実験すると実際に縞模様が出ちゃうから、『じゃあ、電子は波なんだな』ってなるじゃないですか? 少し考えて、もっと言えば、粒として発射された電子が波になって、そしてスクリーンに到達した時に粒に戻るのかなって思うかもしれない」

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「そこでね、学者さんは考えるんですよ。2つのスリットの内、右側と左側、どっちを電子が通ってるんだろうって。 それで今度はここにセンサーを付けるんです。電子が通過したら分かるように。そしたらどうなると思います?」

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「え? もう全然想像もつかないです……」

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「センサーで観測したら、さっきまで見えていた縞模様が消えて、砂で実験した時のように2本線が出るんですよ」

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「えー! なんで!?」

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「不思議でしょう? 量子は、観測すると挙動が変わるんですよ。我々が見ていない所だと『波』としてふるまっていたのに、我々が見ちゃうと量子は『あ、今見られてる』ってことに気付いて、とたんに『粒』として振る舞い始めるんです」

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「それは、カメラの電磁波が作用して、とかじゃなくてですか?」

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「はい。でも、それだけでは説明がつかないようです。未だに良く分かっていません。ただし、観測するということは見るために『触る』必要があります。これは『手で触る』ということではなく、例えば、目で見る時も光がその物質に触れてないと見えませんよね? その『触る』という影響が災いして量子は、『あ、今見られている』って気付いてしまうということです」

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「なので、量子力学では、観測しないでおけば、Aのスリットを通った状態と、Bのスリットを通った状態の2つの状態がそのまま重なり合って存在できたのに、それが観測された瞬間に『僕は粒だよ』ってアピールして、片方に収束するというような考え方をします」

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「この重なり合ってる状態というのがキモなんですよね」

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「そうです。ほかにも量子って不思議なことがいろいろあってですね、例えば1つの量子を、強い力で引っ張ってちぎって2つに分けちゃいましょう。言わば量子の双子のペアを作っちゃうんですね」

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「はい」

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「この双子は察しが良くて、片方が見られたらもう片方も必ず『見られた』ということに気付くんです。で、その双子のペアは距離に左右されることがない、つまりはどれだけ遠い場所にあってもお互い素性がバレたことには気付くんですよ」

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「片方が地球にあって、もう片方が太陽系のはるか先の星にあったとしても気付くんです。しかも、一切のタイムラグが無く、完全に同時に」

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「えー! 怖い!」

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「これがいわゆる『量子テレポーテーション』と呼ばれる技術の原理なんですが、ね? おかしいでしょ? 今までの感覚で理解できる物理法則を完全に無視した動きをするんですよ、量子って」

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「なんでそんなことが起こるんですか?」

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「それを研究するのが、量子力学です……!」

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「よっ! 日本一!」

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「なぜそうなるか、っていう謎は分からないままなんだ……!」

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「社領ちゃんがそれを解明したらノーベル賞もらえるよ」

 

量子コンピュータって?

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「で、その量子の謎を解明していくと何ができるようになるかっていう話なんですが」

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「有名なのは量子コンピュータですね。量子を利用して計算しようっていう」

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「その量子コンピュータは、今までのコンピュータとどう違うんですか?」

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「例えば、クロネコヤマトの人が10軒の家に荷物を届けないといけないとすると、そのルートって10×9×8……ってやっていって、362万通りぐらいあるんですね。で、その内どのルートを辿って配るのが一番早いかを計算するのって、今までのコンピューターだと、例えば順番に総当たりして行くんですよ。ルートAなら何分かかる、ルートBなら何分かかるって順番に362万回やって、その中で一番早いやつを選ぶっていう」

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「それでももちろん人間がやるより圧倒的に早いですし、もっと賢いやり方で実際はやってますけど、これが10軒じゃなく12軒になると今度は4億通り近くになるんですよ。そうやって数が増えて行くと、さすがに今のコンピュータを使ってもめちゃくちゃ計算に時間がかかるんです」

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「なるほど。パスワードが短いとダメっていうのはそういう計算が簡単にできちゃうからですね」

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「そうです。でも、さっき言った通り、量子っていろんな状態が重なり合って存在しているので、その性質を利用して、計算を一気に、全部同時にやっちゃうっていうのが量子コンピュータの素朴な発想です」

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は?

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僕もそろそろ意味が分からなくなってきた。普通のコンピュータって0と1でできてるって言うじゃないですか。量子はそうじゃないんですか?」

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「そうです。0と1を使って計算するのが今までのコンピュータなんですが、量子は0と1が重なり合った状態なので両方の可能性を同時に扱えるんですよ。例えば素因数分解する時って、普通に計算する時は2で割って3で割ってってやっていきますけど、量子コンピュータだと2で割った状態も3で割った状態も重なり合って中に入れることができる

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「で、フタを開けて結果を観測すると答えが出ているっていうのが量子コンピュータの基本的な概念です」

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「もうわけが分からん……!」

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「ただね、コンピュータって言うと今のパソコンみたいになんでもできちゃうのを想像すると思うんですが、今のところ、量子コンピュータは例えば素因数分解だけができる、といった専用マシン的なものになりそうです」

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「それって何に使うんですか?」

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「一番あり得るのは軍隊とかが暗号化されたものを解く時でしょうね。暗号には素因数分解が使われているんで。バレると分かれば、もうその暗号は使わないでしょうが。あとはさっきみたいな10軒ある家のどこから配るのが早いか、みたいな問題ですね。最適化問題っていうものです。ああいうのは量子コンピュータの得意分野だと言われています」

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「その量子コンピュータは、いつ実現するんですか?」

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実はもう販売されてます!

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「え! マジで!?」

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「はい。量子アニーリングという形式を使った量子コンピュータを戦闘機の会社のロッキード・マーティンやGoogle、NASAなどが買って、いろいろと実験していますね」

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「Googleってマジですごい会社なんだな……。民間でそれやってるっていうのがすごい……」

昨年12月、GoogleとNASAが研究を行っている量子コンピューター「D-Wave」が、従来型PCの1億倍の速度で「最適化問題」を解決した。簡単に言うと、従来型コンピューターよりも1億倍高速ということ。NASAはこれを、ロケットの打ち上げ予定の決定や、宇宙での複雑なシミュレーションに役立つ可能性があるとしている。編集部注:D-Waveは量子アニーリング形式を用いている。

参考記事グーグルの量子コンピューター、従来型PCよりも「1億倍高速」と発表(WIRED)

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「ちなみに量子コンピュータって大きいんですか?」

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「大きいですよ。人が中に入れるサイズですね。ただし、さっき言った通り量子ってめちゃくちゃ小さいのでチップ自体はものすごく小さなものです。それを冷やすための装置が体積の大部分ですね」

 

量子アニーリングって?

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だいぶついて来れなくなってる僕と社領ちゃん

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「で、今度は先生の専門である量子アニーリングについて聞きたいんですが、量子アニーリングってなんなんですか?」

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「アニーリングっていうのは日本語で『焼きなまし法』って言うんですが、焼きなましって、例えば日本刀を造る時に熱を加えて叩いて冷やすっていうのを繰り返しますよね? あれを量子でやるんですよ」

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「量子に熱を加えたり冷やしたりするってことですか?」

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「そうです。超伝導量子ビットっていう小さい素子を、物凄く小さなワイヤーを使って並べてから冷やすんですよ」

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「え? 物理的に並べるんですか?」

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「はい。微細加工する機械を使ってジジジジって1000個並べてチップにするんです。この1000個というのは、1000個の量子を並べたものです。これらの量子の重なり合った状態を用意して、それにさっきの最適化問題を解かせるように配置して、あとはでっかい冷凍庫みたいなやつで冷やしておく。そのあと観測すると結果が出ているっていう」

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もう考えるのが嫌になってきた。つまり、量子アニーリングっていうのは量子コンピュータを作る際のアプローチのひとつってことですか?」

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「そうです。世界中の研究者が量子について研究している内に、『量子コンピュータって、普通にやると、作るのめちゃくちゃ難しくない?』っていうことに気付いたんですよ。このままだとなかなか実現しない、と。それでほかになんか良い方法ないかなって模索して再発見されたのが量子アニーリングですね。説明が難しいのですが、『量子コンピュータの本気の性能に至らないけど、量子の性質を利用した計算はできるようになった』という感じでしょうか」

 

日本とアメリカの違い

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「たぶん、これ以上量子力学について進んで行くと脳味噌が爆発すると思うんで、今度は量子から離れて、エンジニアとか研究者とかの環境についてお伺いしたいんですが、先生は今日、ロスアラモス研究所が主宰する国際会議の帰りと仰っていたじゃないですか。やっぱり環境がアメリカとは随分違うんですか? さっきのGoogleが量子コンピュータ作ってる話とか聞いたら到底勝てないような気がするんですけど……」

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「うーん、数の暴力には勝てないって感じですね」

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「やっぱりそうなんだ」

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「まず、組織力がすごいんですよ。アメリカってひとつのプロジェクトに大量の人数で取り掛かってるんですよね。それがみんな猪突猛進でがーってやってくる。日本だと数人とかせいぜい数十人とかだったりするんですが」

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「それって政策の違いなんですか?」

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「そうですね。日本の研究者はリーダーを作る教育をされてるんですよ。だからあちこちにリーダーがいて、そのぶんグループの単位も小さくなるんですね。それに、アメリカに比べると研究者の数が少ないんですよ。そのぶん日本の研究者はいろんなことやらされるんですよね」

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「例えば僕は大学に属しているので、学生の指導もしますし、授業もあります。期末試験の監督もしますし、入学してくる学生の募集のイベントや、ほかにも書類を用意して研究費をもらったりもしなきゃいけない。大学のいろんなお手伝いもしなきゃいけない。その隙間をぬって研究するんですけど、アメリカだと大学でも学生に教える人と研究を中心にする人っていうように分業されているんですね。そのあたりはやっぱり強いですね」

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「えー。それだと絶対勝てないじゃないですか」

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「ただね、『アイデア』みたいなのを思いつくのは日本の方が実は強かったりするんですよ。さっきの量子アニーリングも、最初に言い出したのは、僕の先輩である門脇さん、指導教官である西森さん(西森秀稔:東京工業大学教授)っていう日本人ですし、超伝導量子ビットの精度の良い制御技術を作ったのも日本人です」

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「ただ、その思いついたものを研ぎ澄まして行くような過程ではやっぱり数の暴力には勝てない、と。負けてるとは思わないけどアメリカと日本の研究は得意分野が違うなって思います。数の力には勝てなくても、研究分野で日本の存在感がないってことはないと思いますよ。個々の力で言えば日本の研究者はまだまだ優秀ですし」

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「なるほど。日本でも、もっと優秀な技術者やエンジニアを増えやすにはどうすればいいんですかね?」

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「それはズバリチーム力です。誰もがリーダーではなく、それぞれの適性に合わせて、いろんな役割を大切にし、それぞれが得意なことで夢中になる場所や雰囲気、そしてチームとして協力することが大事です。あと新しいアイデアに対して、批判的になるのではなく、『まずやってみよう』、『やってダメなら次を考えるくらい』の考えを持たないとダメですね。やらずにほかのアイデアばかり追い求めてる間に、前に検討していたアイデアが腐ってしまう場合もありますから」

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「なるほど。ちなみに先生はずっと研究者とかエンジニアっていう職業でやっていく感じですか?」

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「これがね、けっこう難しい問題なんですけど、大学に所属していて研究成果を出して、それが評価されて助教から准教授、教授っていう感じで、まぁ偉くなるとするじゃないですか。そうすると今度は研究ができなくなるんですよ。なんでだと思います?」

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「あ! 分かった! 偉くなるとやらなきゃいけないことが増えるからだ!」

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「そうなんですよ。これはきっと日本の技術者がみんな抱えてる問題だと思いますよ。任天堂の岩田さんとかもそうですよね」

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「あー、岩田さんなんかは完全なる天才プログラマだったのに社長になってからはプログラム書けなくなったって。まぁ岩田さんは結果的にプログラムも経営もできたから良いんですけど、一般的にはプログラムがすごいから経営も凄いかって言ったら普通は別問題ですもんね」

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「そうなんですよ。研究者として一流だから、じゃあ教えるのも上手いのかっていうとそうでもなかったりしますし。そもそも僕らは教員免許持ってないんですよ。人に教えるための教育を受けていないので。それもあって僕は学生時代に予備校で教えたりして、『教える』ということを勉強をしてきたんですよね」

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「なるほど……」

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「わりとずーっと研究に没頭できる、みたいな施設は日本だと理化学研究所とかがそうなんですけど、僕は大学なので教育や大学の運営が関わってきます。どちらかと言うとまだ研究寄りなので研究を楽しんでいますが、場所や立場によっては、なかなか難しいかも知れません」

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「でも、こんな感じでずっと『量子とはなにか』みたいなのを追求してるとだんだん宗教みたいになってきそうですね」

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「いや、そっちに走る人も実際多いんですよ、これが。量子とは何か、生命とは何かってそれを突き詰めて行くと哲学みたいになってきますからね」

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